自然と人間を行動分析学で科学する

島宗 理@法政大学文学部心理学科【行動分析学, パフォーマンスマネジメント, インストラクショナルデザイン】

もしドラッカーが行動分析家だったら:ドラッカーの名言を行動分析学から解釈する(その17) 「自らの貢献を考える」

名言〔第14位〕:「自らの貢献を考える」

解釈:

 組織における個人の行動とその随伴性は、組織全体のパフォーマンスとその随伴性に同調するように設計すべきである。つまり、組織全体のパフォーマンス向上につながる個人の行動が強化され、つながらない行動は消去されるように、各部署の強化随伴性を調整すべきということになる。
 特に、経営者や管理職は、こうした視点から、組織や部下だけではなく自らの行動の強化随伴性を常に見直し、自らの行動随伴性を整備すべきである。

(追加の解釈)
 経営者や管理職のそうした行動はどのように強化し、維持できるのだろうか。大企業で、雇われ経営者であれば株主総会などが機能するかもしれないが、では、株主の行動はどのように強化、維持できるかということになり、強化随伴性を設定する行動の強化随伴性は何重にも入れ子になり、誰が強化の源泉になるかについての議論はきりがないようにも見える。
 おそらく、実際にはある行動から入れ子が遠ざかるほど、その影響力は薄れ、また、一貫性、同調性も薄まり、どこかの時点で、いわゆる「equilibrium」な状態になるのだろうが、社会、経済、経営環境が目まぐるしく変動する現在、均衡状態が安定して続くことは稀であり、それゆえに、自然に放置したままで均衡状態に落ち着くのを待つよりも、積極的に介入して、安定し、かつ、強力な均衡状態をつくることが求められているのだろう。
 その一方で、そうしたルール支配的な制御による行動も、いずれは随伴性制御に押し流されるという、いわゆる「まにまに」的な真理もあるのだろうなと思う。

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