自然と人間を行動分析学で科学する

島宗 理@法政大学文学部心理学科【行動分析学, パフォーマンスマネジメント, インストラクショナルデザイン】

行動分析学から心理学の基礎概念を解釈する(その14):ラポール

定義:
 「心理療法において治療者とクライアントの間に存在する人間関係をさす。(中略)治療者は親密で暖かい感情の交流をもつように心がけることが大切であり、ラポールが治療の第一歩である。(中略)受容的態度によって治療に有効なラポールが形成される」(『心理学辞典』(有斐閣), p. 874)。

行動分析学的解釈:
 心理療法では、まず、クライアントの怖れや不安といった情動反応を引き起こす条件刺激や無条件刺激が提示されないように、そして、カウンセラーやカウンセリング室が、クライアントのいかなる発言もカウンセラーがそれを批判せずに聞くという好子出現による強化の弁別刺激、そして嫌子出現による弱化からの復帰の弁別刺激になるように、クライアントにとっての嫌子は出現させず、発言は弱化せず、また内容によって分化強化せずに、どのような発言でも同じように微弱に(大袈裟にせず)強化する。これにより、クライアントの安心した来室行動を自発、維持させ、不安なく話をする行動の頻度を安定的に維持する。

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