自然と人間を行動分析学で科学する

島宗 理@法政大学文学部心理学科【行動分析学, パフォーマンスマネジメント, インストラクショナルデザイン】

『行動経済学 経済は「感情」で動いている』

行動経済学の研究が数多くダイジェストされている内容の濃い本。

この手の研究では課題の工夫のされ方がほんとうに面白くて、時に感動までする。今回、いちばんウケたのはこれ。

(シーらの)実験では、50セントのハート形のチョコレートと、2ドルのゴキブリ型のチョコレートを選ばせると、2ドルの方を選ぶ人が多かった。しかし、実際に食べるときにどちらが満足度が高いか訪ねると、ハート形という人が多かったのである(pp. 265-266)。

好子=好きなものではないという好例であり、同一の好子でも、強化する行動によって強化力が異なると言えないこともない。こういう発想が行動分析学者から出てくることが少ないのは残念だ(生真面目すぎるのだろうか)。

他にも「二重プロセス理論」は随伴性制御とルール支配の区別にかなり近似していたり、「損失回避性」(損失は同額の利得よりも強く評価される)は、同じ好子を使った好子出現による強化と好子消失阻止による強化とでは果たして強化力が異なるのだろうかとか、「現状維持バイアス」は行動的慣性と関連していそうだとか、同じテーマを行動分析学からアプローチしたら、さらに面白い知見がでてきそうな雰囲気。

いくつかの実験の元論文を読んでみようかな。